檻之
汰鷲
ORINOTAWASHI

人と人は約束することもなく出会う

Weblog

コメントはまだありません


Share this post

今日は午前中にパピエマシェの動物シリーズで鷹をつくり、午後から空き家に関する原稿を風呂に入りながらiphoneで書いてみた。文章を喋るように、その流れで書くと、まとまるのがわかってきた。風呂でやるのは、かなり集中できるよい方法だった。

絵を買ってくれたDJのMetalくんと3時に池袋で待ち合わせ。少し前に電話があって、銀座の潰れるビルで音楽家のWhy Sheep?が講演をするから行かないか、と誘ってくれた。行くと銀座の三越そばにある名古屋商工会館が、ギャラリーになっていた。「THE MIRROR」というタイトルのグループ展で、浅葉克己、松岡正剛、名和晃平、ほか20名ほどが展示していた。
着いてすぐ、Why Sheep?こと内田学さんのレクチャーを聞いた。ジョン・ケージからBrian Eno、KLFから現代のサウンドアートに関する講義だった。学さんは、歴史的な背景を説明して、枯山水サラウンドディングとしての活動の報告した。講演で、もっと具体的な活動の苦労や、どのように実現してきたか、ということを聞きたかった。アーティストは、その歴史を並べることはできるが、結局、その人なり活動がどのようにカタチになっているのか、現時点での自分の状態に分析・批判する言葉を持っていないように思う。聞き手が、もし内田さんのような活動をする際に、どうしたらできるのか、どうしたらサバイバルできるのか、そういう話が聞きたかった。

その後、展示されている作品を見て回った。空きビルの活用方法としては、なるほどだが、作品展示のインパクトとしては小さかった。作品のひとつひとつはよかったが、ビルの雰囲気が作品の質を下げていた感があった。商工会館がとても古いビルなので、作品も一緒に古びて見えた。目に付くのは写真の作品だった。写真をフレームに入れて飾る、そのつくり方に興味を持った。作品をどう仕上げて、展示するか、それこそが重要な見せ方だ。最上階には、松岡正剛による本のセレクトショップがあって、剣豪のコーナーにあった剣と禅と書に通じた「山岡鉄舟」の本が、欲しくなった。自分を剣豪のように、もっと動かせるようになりたいらしい。

その後、学さんの講演に来ていたメンバーで呑みにいった。知らない人たちが集まって飲み屋にいった。そこにサウンドファニチャーの藤枝さんもいた。藤枝さんは、学さんの影響でサウンドスタイルが変わったそうだ。ほかの人たちと少し話をすると、共通の知り合いがいたりで、すぐに打ち解けた。この瞬間が素晴らしい。なにせ知らない人と話すのは、未知の領域に足を踏み入れることだ。

Metalくんはライターとして音楽のエンジニアとしてキャリアを積んできていた。彼は、トランペット奏者として世界的に有名な近藤敏則のスタジオに出入りしている。先週、MetalくんのDJを聴いたが、とてもよかった。彼は自分のDJスタイルについて、芸術か娯楽かで論争した時期があると教えてくれた。現在は、芸術としてやっているそうだ。これから音楽作品を発表していくと話していた。彼の音楽が好きだ。なにか一緒にやりたい、と空想した。

元政治家の秘書をやっていた人がいた。現在はデザイナーとして活躍している様子だった。空間を変えたくて政治の世界に入ったらしい。でも、やってみたら、政治からではなく、自分から働きかけた方が、空間を変えられると気が付き、方向を変えたそうだ。近く、東京の川を遊覧しながらの音楽会を主催するそうだ。コンセプトが面白かった。生楽器を演奏して、船で遊覧して音を聴くが、実際は、その音楽は聞こえなくて、街のノイズにかき消されてしまう、橋のしたを通るときだけ、音楽が聞こえるそうだ。サウンドスケープとしての実験だ。この人は、都市の音を聴くイベントをやりたいそうだ。

絵を渡しにいくだけの予定が、すっかり軌道を外れて、何人かの人と話す機会を得た。途中で帰ることもできたけど、この社会をつくるのは、人間だから、ひとりひとりの人間と出会い、その活動に耳を傾けることが、フィールドワークになる。昨日出会ったひとは、それぞれが社会のなかで、自分の表現をしていた。そのやり方にヒントがたくさんあった。こうして出会いを引き寄せてくれる音楽が自分のルーツなんだと改めて実感した。人と人は約束することもなく出会う。それが人間関係の始まりだ。

0 Responses to this post
Add your comment